わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。
呟いた私の声は、少し遠くにいるお母さんには聞こえない。わたしがいるリビングの扉から、テレビを見るお母さんの横顔は見えているけれど、あっち側からではここは死角になっていてわたしの姿は見えない。
「自殺……?何やってんの、馬鹿じゃないの……?」
冷たい声で、そして心底呆れた声で、そう言い放ったお母さん。お母さんのその言葉を聞いた途端、わたしの期待は見事に崩れ落ちた。
やはり期待するだけ、無駄だった。わたしはぶるぶると震える右手を必死に左手で握り締め、声にならない嗚咽を漏らした。
「…うっ……、っ」
お母さんの瞳は、冷めていた。テレビ越しにわたしの死体を見つめる母の顔は、世間の母親の顔じゃなかった。なぜ、わたしはそのことにこんなにも悲しんでいるのだろう……。
わたしをここまで追い詰めたのは、わたしの学校でのことを知っても母親らしく寄り添ってくれなかったお母さんのせいなのに……っ。全部全部、あの人のせいなのに……っ。
ここまで来ても、わたしはまだ愛されたいと思っている……?そんな疑問が頭に浮かんだ途端、わたしはどうしようもないほどの絶望に駆られた。
『キャハハハハッ、こぉ〜んなにブズな子にはこれくらいがお似合いなのよ!』
濡らされていく制服。トイレの中に閉じ込められて、ホースから吹き出した大量の水がわたしの体に降りかかる。