わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。
なぜそんな瞳をして見られているのか、わたしには分からなかったけれど、心臓の音が一気にうるさく鳴り出し、血液がふつふつと煮えたぎりわたしの全身に一気に駆け巡る感覚がして、一瞬目眩を覚えた。
目眩がしただけだと思ったのに、私の体は自分の意に反して、ぐらりと世界を反転して地に倒れていく。
その感覚に、体にある全ての穴がゾワリ──、と鳥肌が立ったようにしてわたしは初めて恐怖を感じた。
「…あ、───っ」
思わず助けを求めて蛍さんへと伸ばしたその手は、全然届きそうにない。今日の朝のことを思い出して、わたしの瞳からまた涙が溢れ出る。決して、死ぬのが怖くなかった、というわけじゃない。
駅のホームに降り立つ感覚は今でも忘れないほどわたしの体に染み付いてしまっていて、体が地へと落ちていく感覚に絶望を覚えたのだ。
死にたいと願ったのはこのわたしのはずなのに、電車に轢かれる寸前、わたしの体はこれ以上ないくらいに強く強く、強張っていた。
まるでそれは死を拒んでいるかのようで、心の何処かで、まだ死にたくないっていう感情があったんじゃないかと思うと、わたしはどうしようもなく怖くなる。