わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。


 だって、もし本当にそうならわたしが今この世界で息をしていることなんて、奇跡としか言いようのないものなんだから……。

 わたしは恐る恐る蛍さんのその端正な顔へと目を向けた。この人は一体、わたしの何を知っているというのか。なぜこんなわたしなんかに、こんなにも優しく接してくれているのか。

 蛍さん───…、わたしはあなたのことが全く分からない。……でも、これだけは何だか、分かる気がする。

 きっと蛍さんは人よりもずっと他人に優しくすることが出来る人だから、見知らぬわたしのこともこうやって慰めてくれているわけだ。

 ツイッターで学生たちの神として沢山の人たちに崇められていた蛍さん。沢山の子たちが蛍さんの言葉に救われて、もう一度前を向いて強く生きようとした。

 そんな子たちが、わたしはどうしようもなく羨ましかった。他人に自分のことを話すのが大の苦手なわたしには、学校での悩みや家での悩みなんて尚更相談することなんて出来なかった。

 ───体が、地面へと落ちていく。今度こそ、わたしは助からない。倒れてしまっただけでは死には至らないと分かっていながらも、なぜかそんな気がするのだ。

 ゆっくりと瞳を閉じて、わたしは体中の力を抜いた。ドサリ───、と地面に倒れた。

 ……のに。

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