わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。
それに、蛍さんがもしわたしが一度死んでいるということを知っていたとしても、わたしが今この世界で生きているということに激しい疑問を覚えるはずだ。
……だって、そうだろう?人は二度は死ねないように、一度死んでしまった人間がもう一度生き返ることなど、全く持って不可能なのだ。
それなのに蛍さんはそのことを疑問に思う前にまず、わたしが死んだ理由を聞いてきたのだ。
……まぁ、生き返った理由を聞かれてもわたしにはそんなこと分かるわけないのだから、答えられなかった訳だけれど……。
それでもやっぱり、腑に落ちない。さっきから蛍さんが言っていることは、わたしが死んだこと前提だ。
「全てに、絶望……?何だよ、それ」
蛍さんの冷たい声にわたしはぎゅうっと手に爪が食い込むくらいに強く強く握り締め、拳を作った。何で、そんなこと言うの……っ?あなたにはわたしの気持ちなんて、分かるはずないんだ。
わたしたちは初めから、分かり合えないんだ。───だって、わたしと蛍さんは住む世界が違う。
誰からも愛されて太陽の照る方へいる蛍さんには、暗闇の中誰にも見つけられず、愛されずにいるわたしの気持ちなんて、分かる訳なかったんだ。
頭ではそう冷静に考えられる自分がいるのに、ただでさえ空っぽになりかけていたわたしの心が、今、ついにただの空洞と化してしまった───。
わたしは心の何処かで、蛍さんにならわたしのこの言いようのない苦しみを、分かってくれるかと思っていたんだ。