わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。
………だけどそれは、違った。違ったのなら、わたしが“蛍さんといつか話がしてみたい”という願いを持って、これまで必死に生きてきた理由は一体何だったのだろう。
そんな夢見がちな願望に囚われ続けなければ、わたしはもっと早くに自殺という決断をして、楽になれていたのではないのだろうか。
そう考え出すと、頭がズキズキと痛み出した。もう、蛍さんなんてどうでもいい。この人は、わたしが思い描いていた、本当に優しい人ではなかった。
「───…そうやって今まで偽善者ぶって、沢山の人たちを嘘の言葉で慰めてきたんですね」
「………っ!!!!」
わたしの口から発せられた言葉は、蛍さんを侮辱する言葉だった。これまでわたしが心の中で大切に思い描いてきた蛍さんという人を、完全に否定した瞬間だった。
なぜこんな酷い言葉を口にしてしまったのかは分からない。それでも、わたしはそれを言ったことを後悔していなかった。
自分の唯一の生きる希望だった人に、どうしてこんなにも酷いことが言えようか。
───それは、わたしは愛を知らない、価値のないどうでもいい人間だからだ。
わたしはサッと立ち上がって蛍さんに背を向け、たった一人のわたしの生きる希望だった大切な人を暗い夜の公園に残して、立ち去った……。
蛍さんの顔は見なかった。見れなかった。
だけど、見なくても分かった。蛍さんの顔は、今、死んでしまいたくなるほど苦しげに、悲しげに、切なげに、歪んでしまっているんだ───。