わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。
となると、多分わたしは幽霊なのだと。死者は生き返りはしないから、そのことが判明してからというものわたしの心の突っかかりは少しだけだけど、軽くなった気がする。
だけど、そんなわたしが突然体を起こした理由。それは、やっぱり蛍さんにあった。
なんで蛍さんは、幽霊のわたしを視ることが出来たのだろうか……?自分が幽霊だと自覚した瞬間に湧き上がってきた真っ当な疑問。
こめかみから冷や汗が流れるのを感じ、わたしはそっと掌でそれを拭った。
「───……あぁ、恐ろしや恐ろしや、」
しわがれた老婆の声が、背後から聞こえてきた。わたしは突然のことにびっくりして、恐る恐る後ろを振り向く。
───そこには、青褪めた顔をした一人のお婆さんが曲がった腰に腕をやりながらこちらに視線を向けていた。
わたしのこと、だよね……?もしかして、このお婆さんもわたしのことが視えるのかな……。そう思い、また一つの疑問が生まれる。
「あ、あの……」
「ありゃまこれは驚いた。───お前さん、幽霊人間じゃの?」