わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。
ガラガラッとした音を立てて、教室の前の方のドアが開き、二年三組の担任が入ってきた。
友達の席で話に花を咲かせて楽しそうにしていたクラスメイトたちが、皆慌てたようにして自分の席に着いていく。みんなが一斉に自分の椅子を引いたからか、ギギギっと金属が床にこすれる鈍い音が響いた。
わたしはそんな騒がしい教室の中、一人本を広げて担任の石黒先生が何か言い出すのを待っていた。
「これからSHRを始めます」
独りぼっちのわたしの朝は、こうして始まる。
この日もただ時が過ぎるのを待ち続けていると、いつの間にか放課後になっていた。今日は、まだスクールカースト上位の素行の悪い生徒たちからいつもの恒例のことをされていなくて、面倒事が減って安心していたその矢先───。
帰ろうと思って下駄箱へ行き、自分のローファーを掴もうとした瞬間。その手は惨めにも、靴を掴むことなく宙を切った。
「はぁ……、」
わたしは思わず深いため息を吐いた。いつものことながら、こんなことが続くとさすがに面倒だ。スクールカースト上位の人たちからもっと酷い虐めをこれまでも受けてきたから、こんな陰湿な嫌がらせはまだ可愛いものだった。
それでも、その虐めは絶対に許されることではないが、……。何も行動出来ず、文句も言えずに居る自分が情けなくて恥ずかしい。