わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。


 私は今、一人寂しく独りぼっちの世界で今日も息を殺し、時が過ぎるのを永遠と待っている。

 こんな生活は、死ぬほどつまらなかった。この世界には楽しいと思えるものなんて何一つなく、逆に息苦しいと思うものは増えていくばかり。

 私は今日も、教室の隅に追いやられた落書きだらけの机で、スマホの通知音を聞いていた───。

 手に持ったスマホのパスコードを解除し、ホーム画面を開く。青色の背景に白い鳥が描かれたアプリをタップし、その通知音の正体を順を追って見て行った。


【学校つらい……。自分が自分じゃないようで、いい子ぶってる自分のことをみんなが好きだと思っていることが、すごく苦しいです】

【どうしたら本当の自分を他人に見せられるんだろう。偽りの自分を壊す勇気が、私にはありません】


 ネットの世界には、ツイッターの呟きの中には、沢山の人たちの不満や悩み、苦しみに楽しさ、それから嬉しさなどの色々な感情が、画面を通して鏡を透かしたようにして溢れ出て見えてくる。

 ツイッターは、一種の捌け口だ。

 自分と同じ悩みを抱えた人たちが、この世界には沢山いた。その悩みに一つ一つ丁寧に変身をしてくれるような、そんな優しい人もいた。

 ……だけどわたしはまだ、その世界に足を踏み込むことが出来ていない。自分の苦しみさえ吐き出せないような、そんな弱い人間に、この世界の扉を開けてはいけないような気が、ずっとしていたからだ。

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