わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。


 ……また、わたしを責める蛍さんの真っ直ぐ過ぎる嘘偽りない言葉に、傷付いてしまうかもしれない。

 それでも、わたしは聞きたいんだ。あの日、電車に轢かれて死んだわたしを救ってくれたのは、蛍さんだったんじゃないのかって。

 蛍さんはわざと他人が傷付くような言葉なんて絶対に言わないような人だと思うから。わたしはこれに賭けてみようと思う。

 答えがどうであってもいい。だけど、わたしはただ、謝りたいんだ。あんな酷いことを言った自分自身を、許すことなんて出来ない。


『全てに、絶望……?何だよ、それ』


 あの冷たい言葉は、わたしを非難する言葉だったとしても、悪意からのものではなかったのかもしれない。今では、そう思える。だって、蛍さんは───。


***


 朝からずっと寝転がっていた河川敷の草原から通りへ出て、ただ続く一本道を駆け抜ける。右手にはチカチカと光り続ける黄色の信号機。そこを渡って左に曲がり少し行くと、その公園はある。

 息を乱したわたしは、今はまだ明るい公園に辿り着いた。乱れた息は簡単には収まらずにわたしは激しく肩を上下させた。辺りをぐるりと見渡して見ても、一見誰もいないように見える。

 だけどあの日の夜も、誰もいないはずの公園に蛍さんの声が響いたのだから、きっと今日も……。


「───柚葉、…?」

「………っ、!!」

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