わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。


 それでも蛍さんは、こんな臆病者のわたしとは違って、最後には必ず真剣な瞳で他人とぶつかろうとする。

 それが、今のは私にはどうしようもなく眩しかった。今思えば、画面上の蛍さんはわたしの世界の中でいつも輝いていて、まるでその人だけがわたしの生きる希望のように見えた。

 わたしじゃない他の誰かに向けられた言葉だったとしても、わたしにはそれだけで十分過ぎるほど、蛍さんの希望に満ちた文面に優しさと勇気をもらっていた。


「俺はただ、君を救いたかった───……」

「……っ‼︎」


 やっぱり、わたしの悪い予感は当たってしまっていた。あの日あの駅のロータリーで必死にわたしの名を呼んだのは、蛍さんで間違いなかったのだ。

 もし、それにあの時気付いていればこんなことにはならなかったのではないだろうか。……あぁ、たらればを考えても仕方がないじゃない。

 過ぎてしまった過去は変えられない。じゃあ、決められた未来は……?

 あの不思議なお婆さんの顔が頭に思い浮かんだ。あの人は、まるで世界の全てを知っているような、そんな慈悲深い瞳をしていた。

 それはわたしには到底理解出来るものではなくて、加えてお婆さんの言葉の意味をわたしはまだ完全に受け入れた訳じゃない。


「蛍、さん……っ」

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