わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。
一度流れてしまった涙は、もう止まらない。わたしの目から何か熱いものが流れて、頬を濡らしていく。
それが涙だと気付いたのは、蛍さんのたくましい腕に抱きしめられていると分かった時だった。
蛍さんの心臓の鼓動が伝わってきて、わたしは宙で彷徨い続けていた手をその背中にそっと添えた。ゆっくりと瞳を閉じて、息が落ち着くのをただひたすらに待った。
「わたしのことなんか、…」
“わたしのことなんか、救ってくれなくても良かったのに”
言いかけた言葉は続かなかった。
たった一人の恩人に、この世界でたった一人、本当のわたしを見つけてくれた気がしたあなたにだけは、こんな言葉は言っちゃだめだと思った。
だけど、今のわたしには自分を卑下する言葉しか言えないと思うから。わたしは青のジーンズの右ポケットからスマホを取り出し、ツイッターのページを開いた。
そんなわたしの突然の行動を驚いたように不思議そうな目をして見つめてくる蛍さん。二人の間に少しの距離ができ、わたしはゆっくりと深呼吸をして文字を打ち始める。
ずっとやりたいと思っていても、勇気が出なくて出来ていなかったこと。わたしが抱く、小さいけれど大きな夢。
それは、───“蛍さんとツイッターで話すこと”
ただそれだけだ。