わたしたちが死にたかった夜にも、きっと意味はあったんだ───。
『柚葉、こんな所で何してるの?』
『あっ、ホタル!ゆずね、ホタルのために泥だんご作ってたの!』
『そうだったんだ、……柚葉のこと家に迎えに行ってもいなかったから、すごい心配したんだよ』
『そ、そうだったんだ……!ごめんね、ゆず、ホタルを驚かせたくて』
小さなお手々に泥団子を乗せて、ふっくらと膨らんだ柔らかい頬を嬉しそうに膨らまして笑う柚葉を見ていると、本当に幸せな気持ちになれた。
『そっか、ありがとう』
当時柚葉は四歳で、俺は八歳の小学二年生だった。俺はその頃人気者で、沢山の人たちから無条件の愛をもらえていた。
俺を気にかけてくれる周りの人たちや友達、先生、そして俺を愛してくれる優しい両親に恵まれて、何不自由ない人生を謳歌していた。
───だけど。
その翌年、俺の両親は高速バスの転落事故で、二人共息を引き取ったのだ。
何も考えられないまま葬式を迎え、沢山の人たちに「辛いよね、悲しいよね」と貰いたくもない言葉をかけ続けられた。
葬式が終わってからも、俺の心からまるで何かがすっぽりと抜け出したような、妙な無気力感だけが残っていた。
明かりも付けずに、ご飯を口にすることもなくただぼーっとして壁によりかかり、ただ時間が立つのを待つ日々は、本当に辛くて、寂しくて、苦しかった。
息の仕方も忘れて突然過呼吸になって救急車に運ばれたこともあったり、前は大好きで仕方がなかった学校にも、行けなくなった。