【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
すると、クラウスがつかつかとこちらに歩んできて、両腕をエルヴィアナの首の後ろに回した。
「――首元が寂しいと思わないか?」
耳元で囁かれてびくっと肩を跳ねさせる。わずかでも身じろぎしたら肌が触れてしまいそうで、大人しくじっとして待つ。
「これで完璧だ」
満足気な顔をした彼が離れていく。首筋に触れる冷たい感触。視線を少し下に向ければ、ドレスによく合う綺麗なネックレスが輝いていて。
そういえば今日、リジーは頑としてネックレスを着けようとしなかった。クラウスからネックレスを贈られることも事前に知っていたかのような。まさかと思い振り返ると、リジーが目配せしてきた。
やはり彼女は知っていたらしい。リジーとクラウスは、親指をぐっと立て合っている。"作戦成功"と言わんばかりに。一体いつの間に打ち合わせをしていたのだろうか。
「そのドレスは、君の侍女たちに協力してもらいながら仕立てさせたものだ。――今日の君は、頭の先からつま先まで全て俺だけのもののようだ。本当に綺麗だ。君はつつじの色が似合う」
「〜〜〜〜!?」
(言わないでって言ったのに!)
うっとりとした表情で賛辞を囁かれ、かあっと顔が熱くなる。彼の甘すぎる表情を見たくなくて俯いたら、首元に光るネックレスが目に入った。クラウスの所有物ということを主張するような輝きに目を眇める。
エルヴィアナは俯いたままネックレスを指先で弄び、小声でぼそぼそと呟いた。
「素敵な贈り物、ありがとう。……大事にするわ」
(きっと、一生)
"一生"という言葉だけ、重たい気がして喉元で留めておいた。この先ずっと宝物にするだろう。彼が自分のために選んでくれたのだと思うと、無意識に口角が上がってしまう。
クラウスは手で口元を覆い、目を見開いた。
「……そんな可愛い反応をされると、どうにかなりそうだ」