【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜

「そうだ。ルイス王子はエリィに惚れたフリをすることで、ルーシェル王女がどう出るか試した。この件はそのまま両陛下に奏上される」

 今日の広間での出来事は、ルイスがルーシェルの悪行を実際に確認するためだった。彼が証人となり、国王や妃に事の仔細を報告すれば――。国王は非常に厳格で、貴族同士の友好関係を重視する人なので、ひどく咎められるだろう。

 きっと、クラウスに接近して妙なことを吹き込むことはなくなる。魔獣も差し出すようにしてくれるはずだ。

「すまない。君を騙すようで心苦しかった」
「まぁ妥当な判断ね。……わたしはすぐに顔に出るから」
「……それは否定しない」

 もし事前に知らされていたら、すぐにボロが出てルーシェルに疑われていたことだろう。というか、クラウスも終始申し訳なさそうな様子でちらちらエルヴィアナの様子を窺ってばかりだった。たぶん、彼も人を騙すことに向いていない。似た者同士だ。

「わたしがお慕いしているのは、クラウス様ただお一人ですからね。昔も今も――これからも」
「知っている」

 その言葉で、すっと肩の力が抜けていく。
 するとそのとき。コンコン、と扉がノックされて、向こうから鈴を転がすような甘い声が聞こえた。

「――クラウス様。お入りしても?」

 その声は、ルーシェルのものだった。
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