【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
クラウスとリジーが親しくしているのは、リジーが元貴族だったときから付き合いがあるからだ。親しくするのは全く構わないが、エルヴィアナだけ除け者にされたみたいで、なんだか不服だ。でも、それを主張するのは子どもっぽい気がして、抗議の言葉は喉元で留めた。
馬車の中で、対面して座る。二人の間にこれといって会話はなく、気まずくなって窓の外の景色を見るフリをした。
(ちょっと……こっち見すぎでは)
痛いくらいに感じる視線を向かいから感じる。はぁとため息をつき、クラウスよ方を見つめた。
「わたしの顔に何かついてる?」
「綺麗な瞳と鼻と唇がついている」
「そういうことじゃなくて。見過ぎよ」
「すまない。綺麗で見蕩れていた」
彼から散々言われ続けて、慣れているはずなのに、照れてしまうのが悔しい。エルヴィアナは目を逸らし、「知っているわ」と答えた。
「エリィ」
「何?」
「隣に……座ってもいいだろうか」
切実に懇願されたら、断ることなんてできない。「どうぞ」と許可すれば、彼はエルヴィアナの隣に座り直した。ほのかに香る香水の匂いに胸がときめく。クラウスはグリーン系の爽やかな香りの香水をよく好んでつけている。
ぴったりと腕を寄せ合った状態で、彼が話し始めた。
「俺なりに君の好きなところを考えてみたのだが。……聞いてくれるか」
そういえばしばらく前に、どこを好きになったのかと聞いたのだった。あれから律儀に考えていたらしい。エルヴィアナがこくんと頷くと、彼はちょっと重々しい感じで言った。
「すまない。正直に言って、答えることができない」