交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
そして日曜日、一織さんに連れられてやってきたジュエリーショップに来た私は、驚きで言葉が出ないでいた。
高級感漂う店内に整然と並ぶ宝石や貴金属に目を奪われていると、柔らかい声色の初老の男性に声をかけられ、ショップの奥に案内される。
ふかふかのソファとガラス張りのテーブルのおる部屋に通され、私は慣れた様子の一織さんに着いていくので精一杯だ。
「事前にお聞きしていた奥様のイメージに合わせてご用意させていただきました」
そう言って運ばれてきた何種類ものエンゲージリング。
どれもこれも輝きすぎていて眩しい。
スタッフは部屋を出ていったので、一織さんと2人きりになったところで、少しだけ肩の力が抜けた。
間違いなく人生最高レベルのソファには落ち着かないけれど。
「希望があれば遠慮なく言えよ」
私はこくこくと頷いて、改めて隣にいる旦那様の格の違いを感じてしまった。
彼はこれが当たり前の世界で生きてきたのだ。かく言う私は、全く体験したことのない世界に飛び込んできた気分。
これから夫婦になるのに、彼の隣が私でいいのだろうか、なんて考えてしまう。
きっと、こんなこと言ったら一織さんは全力で否定してくれるし、なんなら悲しませてしまうだろう。私にそんなふうに感じさせてしまったことを責めるかもしれない。
とりあえず今は、静かに深呼吸をして、目の前の指輪に集中しよう。