交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~

一織さんが伝えていた私の好みと私の骨格や性格などを元に厳選されたデザインの指輪は、どれも見入ってしまうほど素敵なものばかりだった。
さすがプロということだろうか。私の好みドンピシャをついてくるのだから、つい夢中になってしまう。

一織さんが実際に手に取ってもいいと言うので、いくつか試着もした。
こんな宝石触れるのに緊張すると正直に言うと、ひとつひとつ彼が私の手を取って丁寧に嵌めてくれたので、ドキドキしてしまう。

そうして、シンプルでありつつ気品があり、一織さんが付けていてもよく馴染むものに無事決まった。

受け取りは後日になるのだろうと思っていたら、なんとすぐにイニシャルが刻印されて、帰る頃には箱に収まっていた。

「疲れたか?小梅」

「宝石に囲まれたのは初めてで緊張してしまいました。でも、一織さんとお揃いの指輪を選べて嬉しかったです。連れてきてくれてありがとうございます」

「これで、俺がいない時でも少しは安心できる」

「私、浮気はしませんよ?」

「分かってる。だけど、小梅にその気はなくても相手は分からないだろう。人妻だっていう、他の男への牽制は必要だ」

独占欲さえ感じさせる台詞とともに、一織さんの熱の篭った瞳が私を見つめる。
ふと右手が一織さんのとぶつかって、反射で引っ込めようとしたところを捕えられた。

心臓が高鳴って、自分のものじゃないみたいだ。
一織さんは平気なのだろうか。さらっと手を繋ぐけど、照れたりしないのかな。

ちらりと彼の横顔を盗み見たら、少し頬が赤くなっていた。
気のせいと言われたらそれまでだけど、期待してもいいかな。

照れているのも手を繋ぐのも、私を大事に思ってくれているような発言をするのも、彼が私と同じ気持ちだからだって。

まだ胸を張って言えるほどはっきりとはしない。でも、彼の一挙手一投足にこんなにドキドキするのはきっと……

「夕飯、食べてから帰るか」

「そうですね。何食べましょうか」

手を繋いで、夕飯の話をしながら歩く夜道。
何気ない光景がなんだかとても輝いて見えるのはきっと、隣を歩くのが一織さんだからだ。


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