交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ～クールな旦那様と愛妻契約～

「どうした？ 帰ってきてからなんか変だぞ」

「そ、そんなことないですよ！ それより、なんですか？一織さん」

ついに突っ込まれてしまったけれど、へらりと笑って誤魔化す。
誤魔化しきれていないのは一織さんの不信感たっぷりの視線を感じれば分かるけれど、スルーだ。

何はともあれ、自然な流れで彼の隣に着席することができた。
よし、次は…

「俺の両親への挨拶のことなんだが、再来週の週末はどうか、って」

一織さんの言葉にハッと顔を上げる。
そうだ、私が言ったんだった。一織さんのご両親にお会いしたいって。

「大丈夫です！その日にしましょう」

「分かった。伝えておくよ」

「楽しみです！ お土産や服装はどんなのが良いでしょうか。一織さん、一緒に考えてくれますか？」

彼はご両親と私を会わせたがらない。理由は、親子の関係が良いとは言えないからだろう。
でも、私としてはやっぱり、深山の籍に入ったのだからずっと避け続けるわけにはいかないと思う。

関係は良くないだけで、悪くもないのだから、気乗りはしなくても拒絶はしない。

あまり楽しそうではない一織さんの気を少しでも紛らわせたくて、彼を見上げて言う。

「あぁ、もちろんだ」

一織さんの口元が綻ぶ。穏やかな表情にほっと安心していると、今度は眉間にしわが寄る。