交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
「奥様にもよろしくお伝えください」

本当に、どこまでも俺をイラつかせてくれる。扉が完全に閉まると、俺は盛大にため息を吐いた。
入れ違うように、新田がやってくる。

「社長、テーブルが壊れたらどうするつもりですか」

「手加減はした。むしろ俺の右手の方を気遣ってほしいくらいだ」

「丸山副社長、なかなか曲者ですね〜」

頭を抱える俺を横目に新田はのんきな声を出す。俺は丸山副社長がおかしなことを言い出してからずっと頭の隅で考えていたことを浮かべて、新田の方を見た。

「新田」

「はい、社長」

「丸山商事のここ数年の業績を纏めてくれ。特に先代社長が引退してから今日に至るまで、くまなく調べ上げろ」

「りょーかい」

俺の言わんとすることを汲み取った様子の新田はさっそく部屋を出ていった。

丸山商事の先代…つまり俺の祖父と直接取引を行った本人が隠居してからというもの、丸山商事の評判は決して良いとは言えない。

丸山副社長の父親である現社長は経営に関しては素人同然で、一族経営を無理に貫いた結果、実質の権限諸々を担っているのは丸山副社長だ。

父親よりはマシな会社運営の手腕を持つのだろうが、右肩下がりの経営難の中俺との結婚をもってして切り捨てられまいという魂胆が見え見えで不愉快極まりない。

既婚者の男を誑かそうなどという思考に陥るのが到底理解できないものだ。

これを機に、一度丸山商事との関係を見直すのがいい。


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