冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「あの、米良さんこそリリーさんとご結婚されたんですよね。おめでとうございます!」
茉白は今度は笑顔で言った。

「ありがとうございます。近々新婚旅行で留守にするので、その間に仕事がどれだけ溜まってしまうのか想像すると憂鬱ですが…」
幸せと暗い顔が入り混じる米良に茉白はくすくすと笑った。


「そんな、もう大丈夫ですよ!」
エントランスを出て、駐車場まで送ろうとする米良を茉白が制止する。

「さっきも言いましたけど、最後かもしれないですし。」

「…じゃあ…」
“最後”という響きに茉白の胸が軋む。


「茉白さん、私は—」
エントランスを出ると、米良が話し始めた。

「あなたが遙斗との初めての商談で、諦めずに食い下がったときに…自社の製品を“ポーチたち”っておっしゃったことに、とても良い印象を抱きました。」

「そんな風に言いましたっけ?なんか…仕事なのに、子どもっぽいですね…」
茉白は恥ずかしそうに言った。

「意識せずに自然に出てしまうくらい自社の製品に愛情がある方だと思ったので、あの時助け舟を出しました。」

「そうだったんですか!?あの時助けていただかなかったら…ありがとうございました。」

お礼を言う茉白に、米良が微笑みかける。
「次の日…本当に朝7時に現れて、私の分まで資料をご用意いただいて、自己紹介したわけでもない私の名前を覚えていただいていたのも嬉しかったです。」

「え?そんなの当たり前じゃないですか…?」
茉白は不思議そうに首を傾げる。

「大抵の方には私は遙斗のオマケなので、名前も覚えられていないことがほとんどです。」
自虐的に笑う米良に、茉白は信じられないという顔をする。


「私は茉白さんのそういう純粋で真っ直ぐなところがとても好きですよ。遙斗によく似てる。」

「え…」
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