冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「御社のっていうか、営業職自体を外れて企画職がメインになるみたいです。」
茉白は寂しそうな笑顔で言った。

「あ、でも商品企画に主軸を置くことになりそうなので、商品のクオリティは保てると思います。」

———はぁっ

遙斗が最初の商談の時のように呆れたような大きな溜息を()いた。

「“みたい”とか“なりそう”とか“思います”とか、全然真嶋さんの意思が無いんだな。」

「………」

「本当に納得してるのか?」

茉白は少し黙って、俯き気味に頷いた。
「…会社の決定なので。次回は次の担当を連れてご挨拶に来ることになると思います。その際はよろしくお願いします。」

茉白はテーブルの上のサンプルを片付けると、荷物をまとめて帰り支度をした。

「今日はこれで失礼します。今までありがとうございました。」
茉白は深々とお辞儀をした。

「今日は私がお見送りします。」
米良が言った。

「え、そんな…大丈夫です。お忙しいのに…」

「送らせてください。こうやって茉白さんをお見送りできるのも最後かもしれませんし。」
米良はいつも通りの優しい笑顔で言った。


「茉白さん、影沼常務とはその後順調ですか?」
エレベーターで米良が言った。

「…え…あ、はい…それなりに…業績も回復してますし…。」

「なんだかあまり幸せそうじゃないように見えますが?」

「………」
茉白はどう答えていいのかわからず黙ってしまった。

「失礼なことを言ってしまいましたね。すみません。」

「……変…ですよね。前向きにって言って…影沼さんは結果も出してくれたのに、ちゃんと返事ができないんです…」


茉白は思わず本音を漏らしてハッとした。
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