冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
口を開いたのは秘書の男だった。

秘書の男はそれだけ言うと、先程開けたドアを閉めた。
遙斗は恨めしそうに秘書の男を一瞥(いちべつ)すると、渋々ポーチを手に取った。
ポーチのファスナーを開き、中の縫製を確認すると「へぇ」と小さな声を漏らした。それから何度もファスナーを開閉した。

米良(めら)、俺の明日のスケジュールってどうなってる?」

どうやら秘書の名前は米良と言うらしい。米良はすぐさまタブレットでスケジュールを確認した。

「明日は朝8時前が空いてますね。それ以降は商談と会議と移動で22時まで埋まっています。」

(さすが…本当に忙しいんだ…)
茉白は遙斗の多忙な一日を想像した。

「朝一か。ちょうどいいな。」

遙斗が不敵な笑みを浮かべて言った。

「LOSKAさん」

(あ、また…)

「はい?」

「お望み通り、再商談の機会を設けますよ。」

「え!本当ですか!?」
茉白の表情がパッと明るくなる。

「明日の朝7時にもう一度ここで。明日はきちんとした資料をご持参ください。資料がなければ商談も無しということで。」

遙斗は少し意地悪っぽい営業スマイルで言った。朝7時の商談というのはこの業界では通常考えられない早さだ。

「承知しました!ありがとうございます!」

商談時間の早さを全く意に介さないような茉白に、遙斗と米良の方が驚いた顔をした。

「では本日はここまでですね。また明日、ということで。」
米良は落ち着いた笑顔と声色でそう言うと再びドアを開けた。

茉白は急いで荷物を片づけると、今度は軽い足取りでドアに向かった。

「本日はありがとうございました!明日またよろしくお願いします!」

ドアの外で深々とお辞儀をした。

(商談してもらえる!良かった〜!)
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