冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「影沼さんて、すごくたくさん質問してくれますね。」

「早く御社を理解したいので。」

「そう言っていただけて嬉しいです。」
茉白は笑顔で言った。

(真剣に理解しようとしてくれてるんだ。)

LOSKAを知ろうとしている影沼を見て茉白は少しホッとした。


「影沼さんて、みんなから見てどんな感じ?」

茉白は莉子やデザイナーの佐藤など、他の社員を誘ってランチに行った店で聞いた。

「あー想像よりずっと気さくな感じですよ。女子同士で話してても入ってきたり。冗談とかも言うし。」
莉子が言った。

「Amselの新商品のサンプルくれましたよ〜」
別の社員が言った。

「え、そうなの?じゃあうちからもお返ししなくちゃ。」
茉白が言った。

「LOSKAにはあんまりああいうビシッとしたスーツの人がいなかったから、大人〜って感じで結構新鮮だし。」
また別の社員が言った。
LOSKAは服装が自由で、親しみやすい雑貨を取り扱うようなメーカーのため男性の営業も襟付きの服であればスーツでなくても許されている。

(社員のみんなにも馴染んでるんだ。)
茉白はまたホッとした。

「…正直私はちょっとだけ苦手です。」

否定的な言葉を発したのは、佐藤だった。

「え、どういうところが?」

「悪い人って思ってるわけじゃないですよ…ただ」
佐藤は言葉を選ぶように話した。

「たとえば、私のPCの画面を見て“このデザインには何時間かかっているんですか?”って、時間のことを何度か聞かれて…仕事だから時間も大事なのはわかってるんですけど、デザインてそれだけじゃないし…」

「そっか、そうだよね。何時間も考えても閃かなかったのに、急にアイデアが浮かぶことだってあるもんね。」
茉白は佐藤の言葉に理解を示して言った。

「でも、影沼さんに悪意とか深い意図は無いんじゃないかな。デザイナーさんの仕事って営業と全然違うから、興味はあるけどどう聞いていいかわからなかったんじゃない?」

“LOSKAを理解したい”という影沼の言葉を思い出しながら、茉白はフォローを入れた。
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