天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)

魔女のエチエチ攻撃

<魔女のエチエチ攻撃・その2>

グルシアがニンゲン界のマンションに戻ったのは、
深夜、遅い時間だった。

リビングには電気がついていたが、魔女はもう寝ているのだろう、姿がない。

戸棚をあさって、ワインの瓶を取り出した。

正直、天界とニンゲン界の仕事の掛け持ちはキツイ。

魔女ではないが、酒がないとやっていられない、ヤサグレた気分だった。

グラスに、赤ワインを目いっぱい
注いで、一気に飲み干すと、
寝室のドアをそっと開けた。

魔女はベッドにもぐりこんで、
薄暗い照明に、黒髪が溶け込んでいる。

グルシアは、開いている片側の
ベッドに寝っ転がった。

この魔女が天然なのか、おちょくっているのか、悪意があるのか・・わからない。

疲れた・・グルシアは目を閉じた。

「い・・おい・・」

誰かが肩をゆすっている・・
サリエルか・・?

グルシアは、薄目を開けた。

白いリボンが、
目の前に、疑似餌(ぎじえ)の
ようにヒラヒラと動いている。

「えと・・」

魔女が・・
自分の上に覆いかぶさるように、目前に迫ってきていた。

エメラルドグリーンの瞳が、油膜のように虹色をおびている。

「アイスが食いたい・・」

こいつ・・何を言っている?

白い繊細なレースのベビードール、首筋が華奢で、揺れる黒髪がその白さを引き立てている。

胸の谷間に、くっきりと影が落ちていた。

「アイスだ・・」

アイス・・この夜中に・・
なぜ・・頭が働かない・・

グルシアは、質問に素直に答えた。
「ああ、冷凍庫にあるだろう」

「よし、グジョブ!」
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