天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
「そのまさかが、現実に起こっているから、対応に手を焼いている」

長老はもてあますように、
自分の手の平を、ボリボリと掻いた。

「アレクサンドラは大魔女ですよ!
邪悪度高位ランキングの常連ですよ!
聖別されているわけがないでしょうがっ!!」

熱くなったグルシアは、
拳を握りしめ、椅子からなかば立ち上がっていた。
そして、天使としての品格を失くしていた。

バサバサ・・・・

グルシアは自分の背中の羽を、
おもわず鳴らしてしまったのだ。

上司の前では、礼を逸した行為だ。

「グルシア、座りたまえ。
だから天使長である君に、頼んでいる。
君に、アレクサンドラの処遇を判断して欲しい」

「でも、どうやって・・、
私たち、天界の者がアレクサンドラに触れれば、
その部分は火傷のように傷がつきますよね。浄火の作用で」

そう言いながら、グルシアは考え込んでいた。

「無理に徴(しるし)をつけようとすれば、
双方とも浄火で焼き殺されてしまうだろう」
長老は、情報を付け足した。

「アレクサンドラは、異端だ。
我々のわからない、何かがあの魔女にあるのかもしれない」

長老はそう言って、
目の前の分厚い本を閉じた。
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