天使の受難 アレクサンドラとグルシア（魔法の恋の行方・シリーズ１０）

「君が、ここではアレクサンドラについて、一番よく情報を集めているからな。
この件については適任だと、
私が上に、推薦しておいたのだ」

長老は、長い眉毛の下で見え隠れする、狡猾な目でグルシアを見た。

「さぁ、私はこれから会議だ。
失礼するよ」

長老派＜去れ＞というように、片手を振った。

グルシアは頭を下げて、
天使長の位階を示す月桂樹の金のふち飾りの帯を翻し、廊下にでた。

あの爺ぃのほうが、よっぽど狡猾で腹黒いぜ。
面倒くさい仕事を、俺に押し付けやがって。

怒りのあまりに、速足になっていたが、
神殿に続く回廊から、広大な庭に、百合の花が、満開に咲いているのが、視界に入った。

大ぶりの百合が、特に強い香りを放ち、その存在感を示している。

グルシアは立ち止まり、
露で重たげな百合の花弁に触れた。

邪悪な魔女が、純潔の百合だと・・信じられないが。

とんでもないレアケース、研究対象としての価値があるかもしれない。

魔界のやつらと戦闘するには、
彼らの情報を、常に更新しなくてはならない。

特に、大魔女の情報は少ない。
この仕事は、それなりに意義があることだ。

気持ちを切り替えるように、
グルシアは手を鳴らした。

「アークエンジェル、緊急案件だ。すぐに来てくれ」