図書館の彼
私は大学3年生になった。
昨年まではわりと講義もあって忙しかったものの、今年は余裕がある。
ふとあの図書館のことを思い出して、電車とバスで2時間弱の街へ向かう。
馨さんがいる保証なんてないし、むしろいない可能性の方が高い。
けど少しの期待を胸に、図書館へやってきた。
「懐かしい……。」
高校を卒業するまでは頻繁に利用していたけど、ここへ来るのは3年ぶり。
3年経っても全く変わらない様子に安心する。
ちなみに馨さんと話していたあの職員さんもいるけど、私のことは忘れているようだった。
きっとそれは馨さんのおかげ。
なんとなく気になった本を手に取って、以前の定位置であった席に腰掛ける。
外で遊んでいる子どもたちの声が僅かに聞こえる。
視界の端を本を大量に抱えた見覚えのある人が通って、思わず顔を上げる。
「馨さん……。」
そこには私に気づいて嬉しそうに微笑む馨さんがいた。
「お久しぶりです、咲依さん。」
「お久しぶりです。」
「元気でしたか?」
「はい。馨さんは?」
「元気ですよ。
昔から可愛かったですが、綺麗になりましたね、咲依さん。」
「え、あ、そうですか?」
「はい。きっとモテモテでしょう。」
「いや、そんな事は……。」
「恋人は?」
「いないですよ。」
ずっと馨さんが気になっていて、告白されても断っていたし、他に気になる人ができることもなかった。
「そうですか。」
心做しか嬉しそうにみえる。
「馨さんは?どうしてましたか?」
「仕事を見つけてひっそり暮らしてます。
その街ではちゃんとしたルートで血液を購入することができて、特に不自由もないですよ。」
「よかった。」