図書館の彼
それから週に1回、2時間程度だったけど馨さんと会うようになった。
ほとんど隣で本を読むだけだったけど、彼との時間は以前と変わらず居心地のよいもので、私にとってはとても大切な時間だった。
その日も、いつもと変わらない水曜日だった。
けど、馨さんのひとことで、いつもと違う水曜日になった。
「咲依さん。」
「はい。」
「突然何を言い出すのかと思うかもしれないんですが、」
「?はい。」
「僕、咲依さんの事が好きみたいなんです。」
「えっ?」
予想もしていなかった突然の告白に、頭が真っ白になる。
「すみません、急にこんなこと。
再会してからずっと、いつ言おうか迷ってたんです。
ほとんどここでしか会ったことないのに、変ですかね。」
「そんなことはないです。」
「最初に会った時に咲依さんが読んでいた本、覚えてますか?」
「あぁ、はい。覚えてます。」
「あの本の主人公、一目惚れした人に会いに行きたくて、それがバレたら大変な目に遭うのをわかっていながら、家からこっそり抜け出すじゃないですか。」
「はい。」
「僕もあの研究所にいた頃、咲依さんに会いたくて、所長との約束以上にここに来てたんです。もちろん所長にバレないように。
送迎していたあの職員の人には、所長の許可を取っていることにしていました。」
「そうだったんですね。」
「僕、多分もうその頃から咲依さんのこと、好きだったんだと思います。
でも外部の人と関わることなんてないから、全然気づいてなくて。
咲依さんに会えなくなって、ふとあの本を思い出して読み返した時、いつも咲依さんのことばかり考えて、咲依さんに会いたいって思うこの気持ちは“恋”なんだと気づいたんです。」
ゆっくり話してくれているうちに、だんだん状況の整理も追いついてきて、今度は馨さんの真剣な告白に鼓動が速くなっていく。
「別に今のままでいいんです。
ただ、どうしようも無く気持ちを伝えたくて……。
驚かせてしまってすみません。」