【完結】鍵をかけた君との恋
週末、私は勇太君の部屋にいた。ソファーに腰を掛けたふたりは互いに、「あの話」を口にするのはどちらかを、探っているような気がした。
「乃亜、お菓子でも食べる?ポテトチップス、持ってこようか」
普通に接してくれている彼だけど、口調はどこか、ぎこちない。
「ううん、大丈夫。それより勇太君、私達ってさ……」
そこまで言っておいて、その先の言葉が喉仏で引っかかってしまう。
「あのさっ。えっと……」
「わかってる」
彼は一度上げた尻を戻すと、ソファーに深く座り直す。
「別れ話、だよね」
バクバク煩い心臓は、今にも爆発してこの部屋中に散らばりそう。人を傷付けることは、精神力が必要だ。だから、責めて欲しい。
陸と私がしたこと、それは決して許される行為ではない。彼が陸に拳を向けた理由がそれならば、私だって咎められる立場にある。こんな最低な彼女と別れられてよかったと、彼にはすっきりして欲しい。
「乃亜」
名前を呼ばれて、背筋が伸びる。
「乃亜は俺と別れたら、陸と付き合うの?」
陸の文字に、体が萎縮した。
「そ、それはない。陸とは付き合わないっ」
「それじゃあ他に、好きな人がいる?」
「いないよそんなのっ。そういうのが理由なんじゃなくって──」
はなから私は、終わりを意識しながら付き合っていたんだ。
彼は私の手を握って言った。
「チャンスを下さい」
微かに震えた唇と汗ばんだ手が、彼の緊張を物語っていた。
「なん、で……?」
私は彼を裏切った。そして彼はそれを知っている。
「私、浮気したんだよ?それをずっと、隠してたんだよ?こんな最低な女、フってよ」
「最低なんかじゃないよ」
「最低だよっ」
「乃亜は最低じゃない」
そう断言されて、頭の中の疑問符が濃くなって、またもや「なんで」と聞いてしまう。柔和な瞳を私に向け、彼は言う。
「愛してくれたから」
「え……?」
「俺達の赤ちゃん、最後の最後まで、愛してくれた。だから、乃亜は最低なんかじゃないよ」
「乃亜、お菓子でも食べる?ポテトチップス、持ってこようか」
普通に接してくれている彼だけど、口調はどこか、ぎこちない。
「ううん、大丈夫。それより勇太君、私達ってさ……」
そこまで言っておいて、その先の言葉が喉仏で引っかかってしまう。
「あのさっ。えっと……」
「わかってる」
彼は一度上げた尻を戻すと、ソファーに深く座り直す。
「別れ話、だよね」
バクバク煩い心臓は、今にも爆発してこの部屋中に散らばりそう。人を傷付けることは、精神力が必要だ。だから、責めて欲しい。
陸と私がしたこと、それは決して許される行為ではない。彼が陸に拳を向けた理由がそれならば、私だって咎められる立場にある。こんな最低な彼女と別れられてよかったと、彼にはすっきりして欲しい。
「乃亜」
名前を呼ばれて、背筋が伸びる。
「乃亜は俺と別れたら、陸と付き合うの?」
陸の文字に、体が萎縮した。
「そ、それはない。陸とは付き合わないっ」
「それじゃあ他に、好きな人がいる?」
「いないよそんなのっ。そういうのが理由なんじゃなくって──」
はなから私は、終わりを意識しながら付き合っていたんだ。
彼は私の手を握って言った。
「チャンスを下さい」
微かに震えた唇と汗ばんだ手が、彼の緊張を物語っていた。
「なん、で……?」
私は彼を裏切った。そして彼はそれを知っている。
「私、浮気したんだよ?それをずっと、隠してたんだよ?こんな最低な女、フってよ」
「最低なんかじゃないよ」
「最低だよっ」
「乃亜は最低じゃない」
そう断言されて、頭の中の疑問符が濃くなって、またもや「なんで」と聞いてしまう。柔和な瞳を私に向け、彼は言う。
「愛してくれたから」
「え……?」
「俺達の赤ちゃん、最後の最後まで、愛してくれた。だから、乃亜は最低なんかじゃないよ」