【完結】鍵をかけた君との恋
 私の体はいつだって、心に逆らう天邪鬼だ。見る気などなくとも目で追って、冷静を保ちたくとも涙を落として。

「好き……」

 そして今日も、何ひとつとして言うことをきかない。

「私、陸が好き」

 昼間の猫のような瞳をつけて、陸は顔を上げた。

「え……?」
「でも、陸とは付き合えない」
「は……?」
「失いたくないから」

 タガでも外れてしまったのか、私は小さな頃からずっと胸に抱えていた、蟠りを迸らせた。

「恋愛なんて所詮、終わりがくるでしょう?私のお父さんは浮気ばっかりだし、陸のお母さんだって離婚した。どうせこの公園にいるカップルだって、一年後またいるかって言ったら半分もいないよ。恋愛は始まったらいつか終わりがくるんだよ。私は、勇太君や他の人とは、いつか終わるって覚悟で恋愛できるけど、陸とは絶対に終わりたくない。そんな悲しい未来、想像もしたくない。だから陸とはずっと今みたいな関係でいたいの。始まりも終わりもない、幼馴染のままがいい」

 機械の如く淡々と述べていると、陸が狼狽え出した。

「ちょ、ちょっと待って。つまりは俺達、両想いってこと?」
「うん」
「だけど俺は幼馴染の枠にいるから、乃亜の恋愛対象外?」
「大切だから、そこから出したくない」

 心底愛しているから。だから陸とは付き合えない。

 再び頭を抱えた陸は、何やらぶつぶつ呟いて、整理し終えた頭をまた上げた。

「乃亜と付き合ったら、絶対別れないっていう自信があるんだけど」
「今の自信は関係ないよ。未来の気持ちはわからないでしょう?」
「この気持ちのまま、ずっといればいいじゃん」
「それも仮定だよ。確定じゃない」

 陸が止まる。苛々し始めている。

「……じゃあ何。乃亜はこれからもずっと、終わっても平気な奴とだけ付き合っていくの?乃亜は俺を好きなのに?他の奴を選ぶの?」

 こくんと頷いて、小さく「ごめん」と言った。

「納得いくかよそんなの……」

 陸もまた、独り言のように小さな声だった。
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