【完結】鍵をかけた君との恋
「ごめん、私そろそろ帰るね」

 最後のポテトをかきこんで、凛花は言う。

「今日、お母さんの仕事帰りにバッシュ買う約束してるんだ。中学のはなんだか小さくて」
「凛花の足、まだ大きくなってるの?」
「そうそう。まだまだ成長期っ」

 ばいばいと彼女に手を振って、私は携帯電話に目を落とす。


「こちら、お下げしてもよろしいですか?」

 ネットニュースのスクロール中、すぐ側で聞こえた店員らしき声に顔を上げると、そこには懐かしい人物がいた。

「森君……?」
「あれ、乃亜?」

 それは中学の同級生でもあり元恋人。店の制服を身に纏っている彼に聞く。

「久しぶりっ。何、もしかしてバイト?」
「うん。高校入ってすぐ始めたんだ。乃亜の髪の毛茶色いから、一瞬誰だかわからなかったよ」

 足元のローファーからロゴの付いた帽子まで、全身まじまじと見つめる私に、彼は「見過ぎ」とはにかんだ。

「森君すっごく似合ってるよ。本物のスタッフみたい」
「いや、本物のスタッフなんだけど」
「あ、そっか」

 あははと笑い合っていると、他の席から呼ばれる彼。「少々お待ち下さいませ」と返事をした後、私の耳に囁いた。

「あと少しで上がるから、ちょっと外で待ってて」


 出入り口正面のガードレールに背をつけて、ぼうっと星なき夜空を見上げる。森君はすぐにやって来た。

「ごめんお待たせっ」
「全然待ってないよ。着替えるの早っ」
「もう七時だけど、喋れる時間ある?」
「うん。うちは厳しくないから」

 私のその言葉で、彼は斜向かいのカフェを指さした。
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