【完結】鍵をかけた君との恋
「乃亜とふたりとか、付き合ってた頃以来?」

 彼と恋仲だったのは、中学二年生の僅か二ヶ月。

「そうだね。別れてからあまり喋ってなかったし、もう嫌われたかと思ってた」
「嫌いになんてなってないよ、ただ気まずかっただけ。乃亜もそうでしょ?」
「うん。ちょっと気まずかったかも」
「恋人なんて、別れたらそんなもんだよな」

 そう言って、彼はパフェをひとくち食べた。
 そのがっちり体型にはそぐわぬ可愛らしい食べ物を、次々に口へ運ぶ彼を見て、あの頃のたった二ヶ月間が、脳の真ん中カラーで再生されていく。

「森君は、相変わらず甘党だねえ」

 ふふっと笑って、ドリンクを飲む。そんな私を見て彼は言った。

「乃亜も相変わらず、ホットのブラックなんだな」

 些細な思い出を覚えていてくれた彼に、嬉しくなった。


「そういえば、森君ってどこの高校にしたんだっけ?」
「俺?俺は並河(なみかわ)高校だよ。乃亜は?」
「桜橋高校」
「え!一駅隣じゃん!合同イベントとかあるらしいよっ」
「へぇ、そうなんだ。何するんだろ?」
「詳しくは知らないけど、確か夏頃だっけな。一年だけで交流会みたいのがあるらしい」

 言われてみればそんな案内のプリントを、入学した際にもらっていたかもしれない。

「陸のとこもバーベキューあるしなー。高校ってイベント多いな」
「森君、陸とまだ仲良いんだね」
「おうよ。この前も中学の面子(メンツ)でボーリング行ってきた。陸の圧勝だったから思い出したくもないけど」

 陸と会えない上に、周りから入ってくる知らない情報ばかりで落胆する。

「乃亜はバイトしないの?」

 私のコーヒーより先に、器を空にした彼が聞く。私はうーんと腕を組む。

「今日の森君見てたらいいなって思ったから、探そうかな。部活も入ってないし」
「俺のとこ紹介しようか?店長優しいよ」
「え。いいよそんなの、悪いよ」
「人手不足だし絶対喜ばれると思う。まあ、気が変わったら連絡してよ」

 ニカッと笑う森君に、私も笑顔で返した。
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