【完結】鍵をかけた君との恋
 部屋で息をついたのも束の間、私の心とは対照的なメールが届く。

『とうとう私にも彼氏ができた!乃亜、今日の夕方会えない?』

 ゴールデンウィークの最終日はどうやら、地獄のブラックデイとなりそうだ。

 
 凛花が待ち合わせ場所に指定したのは、いつものファーストフード店だった。

「乃亜、ここでバイトしてるの?」
「そう。ついこの前からだけどね。森君に紹介してもらったの」
「へー、それはびっくり!元サヤに戻ったりして」
「それはない」

 彼女がいつどう切り出してくるのだろうかと身構えて、声が震える。

 ポテトをひとつ摘んで、それを持ったまま、彼女は話す。

「乃亜。バーベキューっていいね」
「う、うん?」
「ほら、普段は見えない人間の部分が見られるじゃん?火起こしたり野菜切ったり、色々協力しなきゃだし。そこで陸、すごい頑張ってくれたんだよ。重い物率先して持ってくれたり、女子は座ってていいよとか言って、お肉運んでくれたり」

 陸は誰にでも優しかった。私だけは特別だなんて、どうして思えたのだろう。

「私、普段料理なんてしないからさ、包丁で指切っちゃったわけ。そしたら陸、水洗い場までついてきてくれてね、応急処置してくれたの。優しいよね」

 そういうのを放っておけないところは、想像がつくかもしれない。

「乃亜ってお酒飲んだことある?」

 もやもやしながら彼女の声を耳にしていると、ふと質問を投げかけられて、心臓が跳ね上がる。

「え……?」
「もう、ちゃんと聞いてる?」
「き、聞いてる聞いてるっ」
「私ね、間違って誰かのお酒飲んじゃったの。もう、超気持ち悪くなったんだけど、そこでも陸がね、私の荷物全部持って付き添ってくれて家まで送ってくれたんだ。なんかその時、あ、やばい好きかもってなって。いきなりだけど、酔った勢いで告白しちゃった」

 そんなもの、普通ならば驚いて断る。

「そしたら陸、びっくりしてたけどこう言ってくれたの」

 俺は乃亜が好きだから無理。

「少しずつ、凛花を好きになれるように頑張るねって。だからさ、私今、陸と付き合ってるの!超ウケない!?」
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