【完結】鍵をかけた君との恋
 ピンポーン。

 滅多に鳴らないインターホンが、奈緒さんの出勤した静かな家に鳴り響く。どうせ宅配便だろうと無視することを選択するが、何度も鳴らされ痺れを切らす。

「はーい……」
「わ!びっくりした!急に開けないでよ乃亜っ!」

 玄関の前に立っていたのは、森君だった。大きな体に大きな声。頭が「痛い」と言った。

「ど、どうしたの森君」

 彼は胸に手をあてて、ふうと息を吐く。

「さっき客として店に立ち寄ったら、乃亜が風邪引いたって店長が言ってたから、これ買ってきた」

 そう言うと、彼は手に提げていた袋の中からコーヒーゼリーを取り出した。

「風邪でも食べやすいようにゼリー。そんでもって、乃亜はコーヒーが好きだからコーヒー味」

 思わず吹き出た間抜けな笑い。

「え、これ届ける為にわざわざ?あはは!嘘でしょ?」
「わざわざじゃないよ。乃亜の家遠くないし、友達が体調崩してるんだから当たり前」
「ありがとう。まあとにかく上がってよ。今、家に誰もいないし」

 笑うと少し頭に響くけど、こんな時だからこそ余計に、森君の優しさに癒された。
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