【完結】鍵をかけた君との恋
涙のバケツ
 熱が下がれば日常はすぐにやってくる。高校生になってから初めて、私は半袖シャツに腕を通した。

「乃亜ちゃん、昨日どうして休んだの?」

 登校早々心配してくれたのは、最近仲良くなったクラスメイトの双葉(ふたば)だった。

「ちょっと風邪引いちゃってて。でも昨日ずっと家にいたら、すっかりよくなったよ」
「そうだったんだ。実はね、私、乃亜ちゃんとふたりで遊んでみたくて、昨日の放課後に誘おうと思ってたの。今日も空いてるんだけど、乃亜ちゃん病み上がりだし、無理だよね?」

 その気持ちを嬉しく思い、笑顔になった。

「私も双葉と色々な話してみたいっ。遊ぼうよ!」
「ほんとに?やったあっ」

 にっこり笑った彼女はチャイムと同時に自身の席へ戻って行く。ハーフのような顔立ちにゆるふわヘアー。同級生の男子数名は、彼女に告白したって噂だ。
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