冷徹御曹司は想い続けた傷心部下を激愛で囲って離さない
 性急に、だけど優しい手つきで、有無を言わさないとばかりにニットもインナーも脱がされる。電気を消した凌士の部屋に、あさひのほっそりとした白い肢体がほのかに浮かび上がった。
 あらわになった素肌が、優しく、けれど容赦なくまさぐられる。なめらかな肌がみるみる熱を帯びた。

「あまり、見ないでください……っ」
「その要求は聞けないな」
「恥ずかしいんです……!」
「ふ」

 凌士は愉快そうに笑い、すぐにまた急くような仕草であさひの肌を求める。
 あさひは与えられる快楽の深さに身をよじった。

(なにも考えられなくなりそう……っ)

 息が上がり、あさひは凌士の名前を切れ切れに呼んだ。応える凌士の顔も、職場で見せる冷徹なものからは想像がつかないほど切羽詰まって見える。
 部屋に満ちた空気が艶を帯び、濃やかさを増していく。

 肌も、体の芯も熱い。溶けてしまいそうだ。
 凌士が服を脱ぎ、均整のとれた体が眼前に迫る。羞恥が膨れ上がり、あさひはたまらず目を逸らしてしまった。そのくせ、暗闇でもはっきりと目に焼きついて離れない。
 否応なしに、心拍が駆け上がる。
 凌士が、あさひの心まで支配するかのような声で告げた。

「すべて俺が上書きしてやる。俺の抱きかただけを、覚えておけ」
「凌士さん……っ!」
 
 とうとう深い場所を貫かれたとき、あさひはシーツの上であられもなく嬌声を迸らせながらやわらかな肢体を跳ねさせた。

(こんな風に、一途に深い思いを伝える抱きかたなんて、知らない)

 根こそぎ持っていかれそうな、あるいは逆にとめどなく注がれそうな……そんな風に抱かれることが自分の人生に起こるなんて。

 感情があふれてどうしようもない。目の奥が熱い。

「すみません。ちょっとだけ……泣きそうです」
「実はあさひの泣き顔も、けっこう気に入ってる。心配するな」

 凌士はまるで大したことではないという風に、あさひの耳元に頭を屈めてつぶやく。
 濡れた頬を凌士の唇が慰撫する。あふれた感情が、凌士の唇に吸いこまれていく。

 人生で最低だった日から、たった二ヶ月。
 あのときはこんな幸せな日がくるなんて、あさひは想像もしなかった。

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