伯爵令嬢は胸を膨らませる〜「胸が小さいから」と婚約破棄されたので、自分のためにバストアップしてからシスターになります〜

絶対に胸が大きくなる!

 まず第一に睡眠です。寝不足はすべての大敵です。社交シーズンで夜中に帰ってきたときはそのぶん長く寝ましょう。シーズン外はランプを消して早く寝てしまいましょう。



 たしかに舞踏会は夜中に帰ってくるのが普通だ。けれどもう結婚相手を探す必要もないし、引退する身なので付き合いも考えなくていい。早めに帰ってきて寝よう。



 次に食事です。豆、キャベツ、鶏肉などがいいとされていますが、正直なところよく分かりませんでしたので、それらを中心にしつつ、ちゃんと食べましょう。腰を太くしたくない気持ちは分かりますが、食べなければ胸に肉がつかないのもまた事実です。

 腰についたむだな肉を胸に移動できれば! と誰もが思うでしょうが、残念ながら森の奥深くに住む魔女の力でもなければ不可能ですので、夢を見るのはほどほどにしましょう。



 もっと魔術的なことが書いてあるのかと思ったが、魔女の話はあれど、内容はいたって現実的だった。逆に面白い。食事は料理長に言ってメニューを変えてもらおう。



 次に詰め物についてです。てっとり早く大きく見せたい方は詰め物を入れても構いませんが、この項を実践しようとしているあなたは、今ある胸を潰すように詰め物を入れてはいけません。

 わざと大きく作ったコルセットの隙間に詰め物を入れるのはいいですが、ぴったりサイズのコルセットに無理やり詰め物を入れて、胸をはみ出させるように大きく見せるのはよくありません。胸を圧迫しないことが大切です。



 詰め物を使わなくてすむようになるのが目標だが、詰め物を入れるならコルセットの胸元のサイズを確認して、場合によっては仕立て直さないといけない。



 次にふだんコルセットをつけているときの胸の扱い方についてです。コルセットをつけたら、胸のまわりの肉をできるかぎりコルセットの中につめこみましょう。その後も誰も見ていない隙を狙って、こまめに肉をつめこみ直しましょう。



 なかなかこれは難易度が高そうな気がするが、離席したときに素早くやる感じだろうか。



 もっとも重要なのが、マッサージです。二の腕から脇の下を通って、胸へ肉を移動させる感覚で行います。脇の下を力いっぱい通ることが最重要項目です。余裕があれば背中やお腹からも胸へ肉を持ってきてください。

 二、三十分ほど、一日一回以上、一か月は続けてください。香油などお使いになると気分も華やかになり、よろしいでしょう。



 これは誰かに見られたら不審なので、寝る前のひとりのときにやろう。



 そんなばかなと思うでしょうが、何をするときにも『絶対に胸が大きくなる!』とご自分に暗示をかけながら行ってください。

 あなたの理想の胸に近付けますように。



 そんなばかな、と思ったが、暗示をかけても不都合はないので、小声で唱えながらやろう。

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