鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

出会い アーロン視点

 アーロンとマリアベルが知り合ったきっかけは、アークライト家がマニフィカ領に兵を派遣したことだった。
 その際、迎撃態勢が整うまでのごく短い期間だったが、アークライト家でマリアベルを保護していた。
 まだ幼いマリアベルは、魔物に襲われたらひとたまりもないからだ。
 皮肉にも、マニフィカ家が危機に陥ったからこそ、アーロンは幼いころにマリアベルに出会うことができたのだ。

「マリアベル・マニフィカです。よろしくお願いします」

 アークライト家にやってきた日のマリアベルは、緊張しているのか、おどおどした様子でアーロンに頭を下げた。
 親から離れ、知らない土地、知らない家に連れてこられた女の子。
 心細いようで、最初は泣きそうになりながら俯いていた。

 初対面の印象は、妖精さんみたいな女の子。
 青みがかった銀の髪は美しく輝き、ふわふわと柔らかそうで。
 空みたいに澄んだ瞳は、涙で潤んでいる。
 まだ破産前だったため、衣服もお嬢さんのそれで。
 白を基調に、水色を取り入れたふわふわのワンピースは、彼女によく似合っていた。
 
――可愛い。

 愛らしく、儚げで。今にも消えてしまいそうな美しい少女に、アーロンは恋をした。
 初恋だった。

 領地は荒れ、親元からも引き離された彼女を元気づけるため、アーロンは必死になった。
 一緒に遊ぼう、とマリアベルを誘って庭に連れ出し、一緒に花を見た。
 がらにもなく、花冠なんてものを作ったりもした。
 武の家に生まれたアーロンは、男が花なんて、自分は男らしくいなければ、と思っている部分もちょっぴりあったのだが、そんなものは初恋を前にぶち壊された。
 男らしく? そんなことより、好きな子の笑顔のほうが大事である。
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