鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

魔法オタクと頼られ男

 昼休みを迎えると、多くの学生が学食へ向かう。
 王立学院というだけあって、学食で提供される食事も一級品だ。
 ちなみに、無料ではない。
 学食らしく値段は抑えられているが、貧乏娘のマリアベルには手の出ない価格だった。
 一度だけアーロンに食べさせてもらったときには、あまりの美味しさに「ん~~」と声が出てしまったものだ。
 その後も彼に「代金はこちらで持つから」と誘われたが、流石に申し訳ないので辞退している。
 ……ので、彼女は弁当を持参し、その日の感じで選んだ場所で、昼食をとっていた。
 ちなみに、マリアベルの手作りである。

 今日のマリアベルは、中庭の気分だった。
 溢れる自然。見事な噴水。複数のベンチに、芝生に……と、なかなかよい場所である。
 他の学生にも人気のあるスポットで、昼休みの後半になると人が増えてくる。
 しかし、昼休みが始まったばかりの今は、学食にいる人が多いため、まだ空いていた。

 人もまばらな中庭で、ベンチに座り。
 お弁当を広げたマリアベルは、にっこにこだ。
 本日のメニューはサンドイッチ。
 野菜はマニフィカ邸の畑で採れたもの。肉は、昨日のマリアベルが帰宅後に狩った魔物のものだ。

「いっただっきまーす!」

 待ちに待った、ご飯の時間。
 一人ぼっちなのはちょっと寂しいが、とにかく早くご飯にありつきたい。
 サンドイッチを手に取り、かぶりつこうとしたとき。

「おっ、いたいた。マリアベル嬢!」
「んえ?」

 サンドイッチに口をつけた状態のマリアベルが、顔を上げる。
 目の前に人はおらず、きょろきょろとあたりを見回してみると、ちょっと離れた場所で、黒髪の男子生徒がマリアベルに向かって手を振っていた。
 その隣には、アーロンの姿もある。

「あーおんさあと……だえ?」

 もぐもぐと口を動かしながらも、マリアベルは首を傾げた。
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