鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

ようこそ魔法研究会へ

 その日の放課後、マリアベルはアーロンとともに魔法研究会の部室を訪れた。

「場所もわからないだろうから、案内するよ」
 
 などと言ってついてきたアーロンだが、本音は「魔法オタクたちからベルを守りたい」だった。
 扉を開けば、そこには――

「マリアベルちゃーん! 魔法研究会へ、ようこそ!」

 魔法特待生の来訪に大喜びのミゲルと、期待の目を向ける会員たち。
 それに、おずおずと控えめにマリアベルに視線をやる、女の子の姿も。
 チェリーブロンドの髪に、ピンク色の瞳の、大人しそうな子だ。
 肩につかないほどの長さの髪は、ふわっとしていて愛らしい。
 まだ慣れていないのか、他の会員とは様子が違う。
 マリアベル、ぴんとくる。あの子が1年の特待生ね! と。

 その後、マリアベルは会員たちにもみくちゃにされた。
 飛んできた質問は、ミゲルがしてきたものとほぼ同じ。
 流石は授業だけでは足りない、魔法オタクの集団である。
 家柄も、学年も、性別も関係なく、みんながマリアベルを歓迎し、魔法の話をふってくる。

 家の事情で領地に引きこもり、学院に通うようになった今も、まだ友達のいないマリアベルは、こんなこと初めてで。
 同年代の人たちとわいわいするこの時間を、楽しい、と思った。
 魔法特待の子とはまだあまり話せていないが、もうこの時点で、マリアベルはこの研究会に入りたくなってしまっていた。

「……あの、アーロン様」
「なんだい?」

 近づきすぎた男子を引き剥がしたりもしつつ、マリアベルを見守っていたアーロン。
 マリアベルの表情の変化や、楽しそうな様子から、彼女がなにを言いたいのかは、もうわかっていた。
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