鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

コレット・コルケットはわからない

 コレット・コルケットは、ごく普通の田舎町の、裕福ではないが特別に貧乏なわけでもない家庭に生まれた。
 家族仲は良好で、妹と弟がいる。
 まだ幼い弟妹と外で遊んでいたとき、はしゃいだ弟に向かって農具が倒れてきて、弟は大きな怪我をした。
 家庭にある傷薬や包帯では、とても治せないような傷で。
 倒れてうめく弟から、どくどくと流れる血を見て、コレットは誰かに助けを求めようとしたが、近くに大人はおらず。
 どうにかして助けたい、治したいと強く願いながら患部の止血をしていたとき、コレットの手がまばゆく光り始めた。
 
 これが、彼女が初めて治癒魔法を使用した瞬間だった。
 魔力を持つ者は珍しくもないが――というより、量を考慮しないなら、ほとんどの者が有しているのであるが――魔法の勉強をする機会のある者は限られている。
 魔法を使うには、それなりの訓練が必要なのだ。
 なにも独占しているわけではないが、教育を受ける機会があるのも、魔力量が多い傾向にあるのも貴族であるため、魔法は貴族が使うもの、と認識している者も多い。

 平民にすぎないコレットには、魔法を学ぶ場などなかったし、魔力量の測定なんてこともしたことがなかった。
 なのに、医者が必要になるような怪我を、治癒術であっという間に直してしまったのだ。
 気持ち1つで高度な治癒術を扱ってみせた彼女には、天賦の才があるとしか言いようがない。

 コレットが治癒術を使った話は瞬く間に広がって、町の魔法使いの元で指導を受けるようになり。
 気が付けば、師匠の推薦によって、ソルシエ王立学院への特待入学が決まっていた。
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