キケンな生徒指導
先生、泣いてるの…?
良心の呵責はあるものの、

「私みたいな血も涙もない生徒、もう指導する甲斐ないでしょ?」

芝居する必要もなくなったので、淡々と告げた。

「指導されるのが嫌だから、俺を好きになったなんて最低な嘘までついたのか?」

先生は、かなり本気で怒っているようだ。

「そうよ。私の居場所だけでなく、夏休みまで奪われるなんて、冗談じゃない。私、そんなに暇じゃないし。好きになったって言えば、先生は困って指導をやめざるを得ないと思ったから」

私の声はどこどこまでも冷たい。

まるで、補導されたあの夜とは立場が逆転したようだ。
 
いま、先生は本気で怒っていて、私だって憤りはあるが、出てくる声は自分でも冷たいと感じるほど機械的だ。

きっと、今の私の眼差しは、以前の先生と同じなのだろう。

「だから、もうこんな不毛な指導は、終わりにしませんか。どんな風に変えたいのか知りませんけど、きっと私は、先生の望むようにはならない。野球部員は先生を待ってるでしょうし、私なんかより指導すべき不良も沢山いるってことは、前にも言いましたよね」
< 61 / 99 >

この作品をシェア

pagetop