キケンな生徒指導
「俺の高校時代というと、部活が一番だったけど、特進だから、勉強も手を抜けば落ちこぼれる。女子から見たら、色気の欠片もなくて退屈だと思うだろ?」

小さく笑いながら先生は言うけれど、

「ううん…だって、そうやって夢中になれるものがあったなんて、素敵なことじゃない?そういうのを青春って言うのかな、って思う」

私には何もないから…という、後に続く卑屈な言葉は、敢えて口にしなかった。

「教師になろうと思ったきっかけは、当時、野球部の顧問だった恩師を尊敬してたからなんだ。熱血教師と言うか…生徒に媚びるような真似は決してしないけど、部員一人一人に向き合ってくれて。俺も、母校の野球部に携わりたい思いがあったから、就職先もここに決めた。それに、尊敬する人が先輩になるわけだから、モチベーションも保てそうだし」

「つまり、その恩師は今も野球部の顧問ってこと?」

「そう願ってたけど…去年の夏、くも膜下出血で急逝したんだ」

予想外の答えに、言葉を失った。
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