格好のつかない黒羽くんは今日もにぶい。
きっと,私の顔は赤くなった。
それが分かるくらいには,頬に熱がある。
その反応の意味を分からないのが月くんで。
今は目の前にいるのが月くんで良かったと思った。
バレて,しまうから。
成長すればするほど縁遠くて,そうはなれないものだとばかり思っていたのに。
初めて,同い年の男の子に,それも好きな人に。
可愛いと言われた。
月くんは可愛い人が好きだから。
月くんが言うなら,私はきっとそうした方がいい。
そう思うのに,今度はそうすることに決めるのがすごく恥ずかしいことのような気がして。
私は善処する,とだけ答えた。
「あれ」
私の心中なんて知りもしない月くんは,今度は絆創膏を張るのに四苦八苦している。
不器用。
それ以上曲がるはずもないのに,必死に腕を回していた。
気が緩んで,手を伸ばす。
「貸して,他人がやれば5秒で終わるから」
体操着の袖が,ひらひらと揺れていた。
私と違って授業を受けていた月くんは,頭にも少し汗をかいている。
「テープは後であげる。腕はよく動くから,剥がれやすい」
ピタリと留めると,月くんは言った。