炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「あれの母親が、ノアに関わるな、子育てに口を出すなと言ってくる」
「陛下にも口を出すなと?」
 
 リアムはミーシャを見ながら、「出すけどな」と言った。

「ノアは一人ではなかっただろ? あの子には雪の精霊獣を傍に置いている」
「もしかして、あの白い仔犬!」
「仔犬じゃない、小さな白狼だ」
「精霊獣の白狼! 陛下も操るんですか? ぜひ見てみたいです」

 ミーシャが操る炎の鳥も小鳥だったり、大きかったりと種類はさまざまだ。
 リアムは「機会があればな」と言って上体を起した。

「あの子がもう少し大きくなったら魔力のコントロールのしかたを教えるつもりだ」
「教えるって、陛下は今、魔力を使うと凍ってしまう身体ですよ」

 ――それに、ただでさえ忙しいのに。教える時間があるのだろうか?

「ノアの教育は俺の義務の一つだからね。それに、凍化病はきみが治してくれるんだろ?」
「それは、もちろん」
「友だちを作らせてあげたいとは前から思っていた。だが、今はオリバーの動向が気になる。新しい人を入れるのは難しいな。皇太子のノアも命を狙われる恐れがあるから護衛を強化するつもりだ」

 リアムはミーシャの髪に触れた。

「きみも、十分気をつけて。オリバーは魔女に危害を加えようとする可能性がある。薬草採りは宮殿内。引き続きイライジャの護衛をつけるように」
「陛下の仰せのままに」

 掬った髪にキスを落とすと、リアムは名残惜しそうにミーシャの髪から手を引いた。

「そろそろ起きよう」
「そうですね。もうお昼前ですし。お腹、空きました」

 腹部を手でさすると、リアムはくすりと笑って「やっぱりきみは令嬢らしくない」と笑った。
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