炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
 思わず強く否定してしまった。逆に怪しまれたかもしれない。気まずくしているとリアムは「そうか」と言って立ちあがった。

「暖はもう十分だ。この礼は必ずさせてもらう」
「礼など必要ありません」
「今日見たことは他言しないでいただきたい。世話になった」
「待ってください」

 さっきまで凍って動けなかった人が少し温まったくらいで出て行こうとしている。
放っておけなくて、ミーシャはリアムの前に立った。

「陛下は魔力が膨大だと存じあげております。寒さ、冷への耐性もある。それなのに、どうしてここまで酷い状態なのか、原因を教えてください」

 森では症状が酷く治療に専念するために事情を聞くのはあとまわしにした。今は引きさがるつもりはなかった。

「貴女に教える義務はない」
「このままでは寿命を縮めます」
「かまわない」

 ミーシャが呆然としていると、彼は脇を抜けて行こうとした。あわててもう一度リアムの進路をふさぐ。

「あなたがかまわなくても、私はかまいます」
「令嬢は関係ないだろ」
「いいえ。私たちは、手紙をやりとりする関係です」

 リアムから視線を逸らさずに、手を振った。炎の鳥が暖炉から飛びだすと、そのまま書斎へ飛んで行く。すぐに帰ってきた鳥の嘴には、皇帝である彼から送られた手紙が咥えられていた。

「会ったばかりで信じられないかもしれませんが、私は誰よりもあなたの味方です」

 手紙を見せながら伝えると、リアムは眉根を寄せた。
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