炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
 炎の鳥は翼を広げひときわ強く輝くと、鳥の原型をゆらりと崩した。揺らめく炎はすべて、ミーシャの体内へと吸いこまれるように消えた。

 青白かった顔に血色が戻る。握っている手は熱をおび、抱きしめている手に彼女の力強い鼓動が伝わってきた。背中に刺さっていたナイフは消え、傷口も塞がっている。

 彼女が生きている。それだけで嬉しかった。
 凍化で冷たく凍っていた心が、今は燃えるように熱い。愛しい気持ちで胸はいっぱいだった。

「ミーシャ。きみが愛しくて、たまらない」

 リアムは彼女の額に自分の額をつけながら、奇跡を起してくれたミーシャと炎の鳥に感謝した。

「リアム。ごめんね。お願い、……泣かないで」

 細い指先が、そっと自分の涙で濡れた頬に触れる。
 
「無理だ。死んだと思った人が、還ってきたんだから。……愛しい人が生きている。嬉しくて、どうにかなりそうだ」

 リアムは大事な人を確かめるために、もう二度と失わないように、ミーシャを強く抱きしめた。

「戻って来てくれてありがとう。ミーシャ。愛している」

 彼女の耳に囁き、頬にキスを落とした。

「私も、リアムのことを愛しています」

 朝焼けのような紫の瞳。好きな人が紡ぐ言葉。心地良い声。伝わる鼓動と体温。すべてが愛しい。
花のような彼女の香りは、もう二度と、見ることも、触れることも叶わないと思った。

 ミーシャの笑顔を見られて、リアムの心は歓喜でいつまでも震えた。

 *

「ミーシャ、動けるか?」
「うん……大丈夫」
「このまま喜びに浸っていたいが、まだ終わっていない」

 頷き顔をあげたミーシャは、真剣な目をしていた。 リアムは今の状況を掻い摘まんで教えた。

「……オリバー大公殿下は、奥さまを生き還らそうとしたのね」

ミーシャは自分の手の中にある魔鉱石を哀しそうに見つめた。

「フルラの魔女は、万の民の命を炎の鳥に捧げることで人を蘇らせることができるらしい。ミーシャ、それは本当なのか?」
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