炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
 炎の鳥に話しかけながら苦笑いを浮かべた。

 今生では、リアムに関わらないで生きていくつもりだった。成りゆきとはいえ、自ら婚約関係を申し出ることになるなんて。

 はあっと大きなため息をついて、手で顔を覆う。

 目を閉じれば、さっき見せてくれたリアムの眼差しが浮かんだ。小さいころの面差しはそのままなのに、大人になったリアムは思い描いていた以上にかっこよく、美しかった。

 ただ、昔と違って彼の顔に笑みはない。まるで、凍化病で身も心も一緒に凍りついてしまったみたいだ。

「心配で、ついお節介が過ぎちゃった……」
「そのようね」

 ミーシャは顔をあげた。部屋に入ってきたのはエレノアだった。

「でも、そのお節介のおかげで陛下の体調は回復したようね。さっきすれ違ったけれど、顔色がよくなっていたわ」

 彼女はにこりと笑うと、ミーシャの前に座った。

「婚約、受け入れたそうね。おめでとう。ジーン宰相がとても喜んでいたわよ」

 楽しそうなエレノアをじろりと睨んだ。

「お母さま。さては、図ったわね?」
「図る? なんのことかしら?」
「とぼけないで」

 ミーシャはぱっと立ちあがった。

「リア……陛下が来ていること、黙っていたでしょう? そのうえで、私にクレアの石碑へ向かわせた。陛下が来るのはいつも当日。前日の今日、いらっしゃるとは思いませんでした」
「そうね。運よく遭遇すればいいとは思っていたわ。今日お着きだと聞いていたけれど、伝えそびれてごめんね?」

 口では謝っているが、まったく悪いとは思っていない顔だった。

「陛下の体調があそこまで酷い状態だと、なぜ早く教えてくれなかったのですか?」
「私も、先ほど知ったからです」

 ミーシャがしかめ面を作ると、エレノアはゆっくり立ちあがった。
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