両手でも抱えきれぬ愛で贖えるものなら
やり直せるものならば
自分から、友達に戻ろうと告げたくせに、私はかなり落ち込んでいた。

例の男からは、

「やっぱり、俺の言った通りだったろ?」

畳み掛けるよう、

「もう、しがらみもなくなったんだから、俺と付き合おう」

そんなことを言われたが、とてもその気にはなれなれず、キッパリ断った。



大好きな人と別れて、久しぶりに、ひとりきりの夏を過ごした。

当たり前のように、いつも及川くんと一緒だったから、淋しいなんて言葉では済まない喪失感だ。

一人の時間が好きだったのも、二人の時間があるからだったのだろうか。

自分がこんなに寂しがりやとは、知らなかった。

別れたと言うより、友達に…と言ったのだから、連絡してはいけない訳でもないのに、出来ない。
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