没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


「……流石に一週間は長すぎるわよ。まあ、あんな大事件が起きたから帰れないのは分かるけど、お父様の身体が心配だわ」
「旦那様は仕事熱心ですからね。……一刻も早く犯人が見つかればいいんですけど」
 私はラナの言葉に同意するように眉根をぎゅっと寄せた。


 事件が起きたのは一週間ほど前。
 王家に代々伝わる秘宝――人魚の涙と言われるサファイアの指輪が何者かによって宝物庫から盗まれてしまった。その秘宝は初代国王の時代から受け継がれてきた非常に貴重な品で、どの国王陛下の肖像画に必ず描かれている。いわば王家の象徴だ。
 したがって、一刻も早く犯人を捕まえて指輪は取り戻さなければいけない。でなければ王家の面目が丸つぶれだ。
 王宮長官であるお父様は犯人逮捕に向けて、その捜査に加わっている。仕事熱心だから犯人が見つかるまでは寝る間も惜しんで手がかりや証拠集めに奔走しているだろう。

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